日本の特撮映画の象徴とも言える怪獣ゴジラが再び海を渡った。以前ハリウッドで製作された、巨大なイグアナが人間を襲うモンスターパニックムービーの同名映画とは異なり、今作は一応「怪獣映画」となっている。主人公はキック・アスのアーロン・テイラー=ジョンソン。ゴジラを追う科学者、芹沢猪四郎博士を渡辺謙が演じる。
あらすじ
1999年、フィリピンの炭鉱で巨大生物の化石とそこに産み付けられた2つの卵が発見された。その内1つは孵化しどこかへ消え去っていた。同じ時期、日本の原子力発電プラントが謎の地震によって倒壊、メルトダウンを起こす。
2014年。当時の事故で母親をなくしたアメリカ海軍爆弾処理班のフォードは、今も事故の調査を続ける父親を探して日本を訪れる。そこで彼は謎の研究機関「モナーク」に協力を仰がれ、事故の原因であった巨大生物「ムートー」と、そのムートーの原始からの天敵、生態系の頂点「ゴジラ」の存在を知ることになる。
感想
ストーリーは主人公フォードを中心とした人間ドラマと、昆虫の様な敵対怪獣のムートーの生態の謎を軸に展開します。ゴジラは主役なのにクライマックスまでは小出しに登場し、あまり見せ場がありません。割合的に、人間ドラマ4:敵怪獣ムートー4:ゴジラ2くらいの印象です。
ムートーの生態の謎をストーリーの軸にしすぎて、肝心の主役の出番が減るという本末転倒な感じになってしまっています。内容を盛り込み過ぎためでしょう。
さらに、リアルな映像演出にこだわったため、ゴジラが全身を晒すことがありません。それでいて『パシフィック・リム』のように怪獣たちのサイズ感・迫力・恐怖感を演出できていないので残念。
更に付け加えるなら「音楽」が圧倒的に力不足でした。もっと迫力ある音楽に力を入れて欲しかったです。
CGによるゴジラの造形はスーツアクターが必要な日本のそれより、よりリアルな生物としてのバランスが取れていて個人的に好みでした。そのバランスのとれたもっと全身像をゴジラお得意の見栄を切ったカットで見たかったです。
また、音響デザイナーたちがこだわったゴジラの「咆哮」は、本家とは違う手法を取りながらもよりリアルで、それでいてゴジラだと分かりる素晴らしい「咆哮」を再現しました。
クライマックスの戦いではゴジラの武器の一つである尻尾を使った攻撃や、例のアレも披露してくれます。正直、ハリウッドのゴジラはアレをやらない(出来ない)と思っていたので「え?できるの?本当にやるの?来たー!」という風に映画館で子供のようにテンション上がってしましました。ただ、若干迫力不足ですし、最後の最後までもったいぶって引っ張っても良かった気もします。
ゴジラは放射能濃度の高かった原始の生物と言う設定らしく、核実験によって生み出されたモンスターという設定ではありません。一方の敵対怪獣のムートーは放射前をエネルギーとして吸収する怪物で、電磁パルス(EMP)を発生させる特性は『パシフィック・リム』に登場したレザーバックという怪獣ともろに被ってしまったのがやっちまった感満載でした。
また、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジをゴジラが襲うシーンも「パシフィック・リム」の最初の怪獣アックスヘッドの登場シーンともろ被りで、しかも迫力で劣っています。
昨年『パシフィック・リム』が公開された時、製作陣は大慌てしたでしょうね。
ムートーのEMPが効かない上空9000mからのサンフランシスコ市街へ、発煙筒の赤い煙が尾を引きながら十数名の隊員たちが降下するシーンは緊張感とオリジナリティがあって良かった。
レビュー
渡辺謙演じる芹沢猪四郎博士の名前はゴジラの第一作監督の本多猪四郎氏へのオマージュでありゴジラへの敬意を評しているのは伝わりますが、『ゴジラ』にはシリーズを通して、人間のエゴへの警鐘と自然への畏怖というテーマが込めれています。
『GODZILLA』でそれについて触れられたのは渡辺謙のセリフ一言のみでした。また、地震、原発、津波を描いたり、原爆を語るシーンが取ってつけたようにこの映画に盛り込まれていたのが疑問でした。
本家を研究したのであれば、根底のテーマについてもっと触れるべきでしたし「怪獣映画」のお約束を見せて欲しかった。その辺りに『パシフィック・リム』との差が出ています。
音楽が印象に残ってないのが残念。「ゴジラのテーマ」を何処かで使って欲しかったなぁ。
★★★☆(3.5)