「漫画アクション」で連載されたさそうあきらの「マエストロ」を松坂桃李、西田敏行主演で映画化。ヒロインに演技初挑戦にして映画初出演の歌手のmiwaを抜擢。「音」を探求する天才指揮者と亡くなった父の「音」を追う若きヴァイオリニストの物語。監督は小泉今日子主演で西原理恵子原作の漫画を実写化した『毎日かあさん』の小林聖太郎。
あらすじ
不況のあおりを受けて解散した名門、中央交響楽団の第一ヴァイオリンにして、最年少コンマス(コンサートマスター)を勤めた香坂真一。彼は楽団解散後、海外オーケストラのオーディションを受けるも不採用となり、プロの音楽家としての壁にぶつかっていた。
そんな折、香坂を初め元中央交響楽団のメンバーが「再結成」の名目の元に指定された練習場の廃工場に集められる。だが、実力のあったメンバーは他のオーケストラへと就職を決め、集まったメンバーは一度は定年退職した老ヴァイオリニストや、運送業やコンビニバイトで生計を立てる負け組楽団員や、アマチュアフルート奏者の女の子など、一癖も二癖もあるメンバーばかり。
彼らを集めたのは、天道徹三郎という楽団のメンバーが誰も知らない無名の指揮者。しかも、予定の時間になっても現れない。仕方が無くコンサートで演奏するヴェートーベンの「運命」の練習を始める香坂達。
だが、その演奏を聴きながら工場の片隅で釘を打っていた作業着姿の老人が「やめい!」と一喝する。彼こそが中央交響楽団再結成の発起人にしてオーケストラの指揮者、天道徹三郎その人だったのだ。
天道は、プロとは思えない演奏をする楽団員達の前に立ち、言い放つ。
「これは決闘なんや!」
感想
指揮者の天道と、コンマスの高坂、アマチュアフルート奏者の橘あまねだけにスポットがあたって、他のメンバーはさらっと上辺を撫でた程度のエピソードでお茶を濁してます。
天道が楽団員(主におじさん)達の弱点を指摘したり、問題を一人一人解決しながら、少しずつオーケストラが良くなり始める矢先に、スポンサー離れによる金銭的な問題が発生するが、楽団員の働きですんなり解決してしまいます。
高坂も簡単に一皮むけてしまうので、紆余曲折を経て七難を乗り越えコンサート当日を迎えましたみたいな空気を出そうとしてますが、ドラマ性は薄くなってしまってます。
予告で「コンサートの先には驚きが」というコピーで煽っていますが、大して大きなサプライズもカタルシスもありません。音楽をテーマにした映画に必要な、客席を巻き込む高揚感にも欠けます。映画館の音響設備の問題もあるかもしれませんが、映画全体のキーワードとなる「天籟(てんらい)」は映画館の客席では残念ながら味わえませんでした。
天道がクライマックスのコンサートの「運命」で仕掛けたテクニックは実際にあるエピソードが元になってるんじゃないでしょうか。このシーンだけは、ぐっと体温が上がる感じがありました。
「プロ」というワードが前半に何度かセリフで出てきますが、プロの演奏者が1億円を超えるヴァイオリンを持ったまま飲みに行って酔いつぶれたり、自転車に二人乗りするシーンに物凄い違和感を覚えました。そこにはリアリティを持って欲しかったです。
まとめ
不勉強ながらmiwaを初めて拝見しました。神戸弁はネイティヴではないでしょうが、イントネーションはなかなか様になってました。ただ、素っ頓狂なキャラクター付けでごまかしてますが、演技自体は当然ながら素人なので、そこは生暖かく観るのが良いと思います。あと、言葉自体に若干の違和感があったので台本の問題でしょうか。
阪神淡路大震災から20年をまさかこの映画の中で、改めて感じることになるとは思いませんでした。ただ、これも取ってつけたような印象が強く、感動につながったりはしませんでした。
謎の指揮者、天道の人生ドラマの方に興味がわきました。
★★★(★3.0)
監督 | 小林聖太郎 |
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出演 | 松坂桃李 西田敏行 miwa |
上映時間 | 129分 |
エンドロール | おまけ映像なし |