日本ロボットアニメのさきがけとなった「機動戦士ガンダム」から35年。当時、キャラクターデザイナーを手掛けた安彦良和が「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」としてリブートしたコミックスの連載終了後、安彦氏自らが監督となり待望のアニメ化。「Z」「ZZ」「逆襲のシャア」「UC」「F91」と100年以上続く宇宙世紀サーガは悲劇の兄妹、キャスバルとアルテイシアの物語で幕を開ける。
あらすじ
宇宙世紀0079年、サイド5(ルウム)空域において地球連邦軍とジオン共和国軍との大規模な宇宙戦が勃発する。開戦当初は圧倒的な戦力を有する地球連邦艦隊が有利に進めていたが、中盤、ドズル中将が投入したモビルスーツ部隊の活躍によって戦局が一変する。
そのモビルスーツ部隊の中に一際目立つ赤い機体が1機あった。後に赤い彗星と呼ばれるシャア・アズナブル中尉のその白いマスクの奥に光る眼差しには、赤い炎を宿していた。
宇宙世紀0068年。サイド3のムンゾ自治区では地球連邦からの独立の機運が高まる中、議長であるジオン・ズム・ダイクンの演説中に急死する。
副議長であるデギン・ザビはメディアを操作して、地球連邦の暗殺説を流布し混乱する政局を制しようとするが、ダイクンの側近であったジンバ・ラルはこれを良しとせず、ダイクンの愛人であるアストライアと彼の遺児、キャスバルとアルテイシアに、ザビ家の陰謀説を説き、息子のランバ・ラルに命じて自分の屋敷に保護させるのであった。
感想
いわゆるファーストガンダムが描いた一年戦争(ジオン独立戦争)の11年前、後に赤い彗星と呼ばれるシャア・アズナブルの少年時代に遡った物語です。副題が示す通り、主人公はキャスバルのはずが、キャスバルセリフは終盤までほとんどありません。しかも喋ったかと思えば声はまるで『天空の城ラピュタ』のパズーで、大きな違和感でした。
冒頭のシャアが戦艦5隻を沈めるという大きな戦果を上げたルウム戦役の戦闘シーンが描かれますが、序盤の見せ場にもかかわらず、宇宙空間の艦隊戦のはずなのに、数百メートルの攻防に見える全く奥行きを感じない画作り。さらにモビルスーツや戦艦の存在感が玩具のようで残念でした。もっと見せ方に工夫が欲しかったです。
後の動乱との対比を演出するためか、コミカルなシーンが頻繁に観られますが、基本的に滑ってたので、次回作では思い切って省いてもらいたいです。冗長なシーンも多いですが、漫画家だと大胆にカットしにくいのかもしれません。
ジオン・ズム・ダイクンは穏健派でザビ家が強硬派という印象でしたが、安彦ガンダムでは、そうではなかったのが印象的でした。実際、ダイクンが暗殺されたという分かりやすい描写は無く、あったのはダイクンの急死をザビ家の次男サスロが息のかかったメディアを操作して地球連邦の暗殺に仕立てあげたという描写のみ。「暗殺」を言い出したのはジンバ・ラルなので、実際には彼の謀略だった可能性もあるやもしれません。
ファーストガンダムに登場したキャラクターが若い頃の姿で何人か登場しますが、声優はほぼ一新されている中にあって、ギレン・ザビの銀河万丈だけが続投しています。イメージが変わらないどころか、当然、当時より渋みがましているので、周りから浮きまくっていて、笑えてきます。
ランバ・ラルの愛人、クラウレ・ハモンが今回大活躍します。ただ、若さゆえか平和な時代だったせいか。一年戦争当時の印象とは大きく違っています。一瞬マチルダさんかと見間違うシーンもあります。
原作漫画でも、「シャア・セイラ編」はさほど面白かった記憶はないので、こんなものでしょうか。当然ながらガンダムは出てきません。
まとめ
1stガンダムファンはオリジンよりガンダムユニコーンがオススメです。DVDやBDがすぐに発売されるので、そちらで観ても良いと思います。
秋に続編が公開される予定のようで、「シャア・セイラ編」のみで4作を費やすらしいですが、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」全編が公開されるまで8年以上は掛かりそうですね。池田秀一氏が現役の内に完成してほしいものです。
★★★(3.0)
監督・キャラクターデザイン | 安彦良和 |
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メカニカルデザイン | 大河原邦男 カトキハジメ |
出演 | 田中真弓 潘めぐみ 池田秀一 |
上映時間 | 62分 |
エンドロール | おまけ映像あり |