寄生獣 完結編

岩明均原作の名作「寄生獣」が山崎貴監督で実写映画化した前作の続編。泉新一と彼の右腕に寄生したミギーが、人間社会に紛れ込み人間を食い殺す未知の寄生生命体「パラサイト」との戦いの中で学び、成長していく物語。

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あらすじ

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自分の通う高校で起こった惨劇以降、泉新一は組織化されたパラサイト達にマークされていたが、母親を殺された恨みを募らせた彼は、次々とパラサイトを殺していった。

そんな泉新一に興味を持った警察は連続殺人鬼、浦上に彼を会わせる。浦上は本能的に人間に寄生したパラサイトを見分ける能力を備えていたためだ。浦上は新一に違和感を感じながらもミギーの存在に気がつくことは無かった。

市長選に当選した広川を中心にネットワークを広げて組織化が進んでいたパラサイト達は、泉新一とミギーの存在を危険視し始めていた。だが、人間との共存共栄の可能性を感じ始めた田宮良子はパラサイト達に彼らの排除を禁止。一方で元教え子を心配するふりを装った田宮は、フリー記者の倉森に新一の監視を依頼していた。

感想

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映画の制約上、前作、本作合わせてカットされたシーン、登場しなかった端役キャラクターが多数あります。新一の父親や隣町の加奈、新一以外に脳を帰省されなかった人間宇田と彼の顎に寄生したジョーなど。

脚本的には物語全体の重要な2つのシーンを同時に展開したりと幾つか改変されていますが、ストーリー上無理のない改変で、改悪などではありません。むしろ、制約の中で原作の本質を変えることなく、上手く表現出来ています。

ただ、市役所でのシーンをコンパクトにしてしまったせいで、後藤の凶悪さが伝わりにくくなっていて、クライマックスの恐怖感が薄らいでいるのが残念です。また、田宮と彼女に向けられた刺客のパラサイトとの戦闘シーンや、クライマックスの新一と後藤の戦闘シーンなど、もっとたっぷり見せて欲しかったという物足りなさ感もあります。

これまでパラサイトをCGでほぼ原作通りに再現してきていましたが、後藤の変異形態は原作コミックスとは異なりました。演じた浅野忠信の人相を残したデザインになっていました。クライマックスシーンでの表情の演技を優先したからでしょう。原作ファンとしては少し残念ですが許容できる改変です。

その分、田宮良子が絶命するシーンや、最後にシンイチがミギーに語りかけるシーンは原作を思い起こさせる迫真のシーンで大満足でした。前作を観た限り、深津絵里は田宮良子のイメージに合わないと思っていたのですが、完結編の深津絵里が演じた田宮玲子はとても良かったです。ある意味、2人目のヒロインと言っても良かったと思います。

そしてクライマックス直前、ミギーと離れ離れになった新一を里美が助けに現れたシーンで橋本愛がヒロイン筆頭の役目を果たします。PG12ということもあって、

レビュー

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前作同様残忍なシーンが多いですが、原作の主題に大きくそれることなく、上手くまとめられてます。満点とは行かないまでも、キャスティングに不満がなければ原作ファンにも十分おすすめできます。

キャスティングの違和感で言うと後藤はふっくらした浅野忠信より、もっとシャープで目ヂカラの強い俳優さんでも良かったかなという印象です。

前作で上手く脚本に生かされていたミギーが眠ってしまう設定が、今作では全く活かされてないのが残念でした。

★★★★(4.0)

『寄生獣 完結編』公式サイト

監督山崎貴
出演染谷将太
橋本愛
深津絵里
阿部サダヲ
上映時間117分
映倫区分PG12
エンドロールおまけ映像なし

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ネタバレ

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原作通り「寄生獣」という単語は市長の広川の口から、人間を形容する言葉として発せられます。人口を増やし続け地球を蝕む存在である人間の存在はまさに「寄生獣」だと。

そして、クライマックスで後藤は新一に頭の中に「この種を食い殺せ」という言葉が聞こえると言います。それは地球や他の生物のものではなく、これ以上人間が増え続けると一番困る存在「人間」自らの「願い」なのだと。

田宮良子が泉新一に我が子を託すシーンと同時刻に市役所でのパラサイト殲滅作戦が進行したため、新一が後藤と戦うシーンでプロテクターの弱点に気付くくだりは残念ながらなくなっています。このシーンは一瞬の間に新一が考えを巡らせイチかバチかに賭ける緊張感がとても好きだったので残念でした。

またこのシーンは、原作のゴミが不法投棄された郊外の山中から、放射能汚染された廃棄物の処理施設に改変されています。後藤に致命傷を与える金属棒も放射能に汚染されていたという内容でした。プロパガンダ的な脚本だなと感じました。