水城せとなの原作漫画を真木よう子主演で実写映画化。監督は『ストロベリーナイト』の佐藤祐市。恋と仕事に悩む30歳の主人公の思考を脳内会議という形で見せる一風変わったラブストーリー。主人公櫻井いちこの脳内会議メンバーに西島秀俊、神木隆之介、吉田羊、浅野和之。
感想
理性の吉田(西島秀俊)、ポジティブの石橋(神木隆之介)、ネガティヴの池田(吉田羊)、衝動のハトコ(桜田ひより)という4つの思考と記憶の岸(浅野和之)が真木よう子演じる櫻井いちこの脳の中で会議を展開し、その内容が思考や行動に現れます。昔からある天使と悪魔が耳元で囁く表現の進化系ですね。
実際には脳内であんな風に会議は行われてませんが、誰でも過去の失敗や成功の経験に基づいた計算をほんの一瞬で考えて動いてるのだと思います。この設定はなかなか面白かったです。
ただ、現実世界のストーリーは質の悪い30歳女性の大して面白くない恋愛話です。とにかく主人公のいちこと彼氏の早乙女にイライラします。この主人公に好感を抱く人がどのくらいいるのか?男女共にイライラしたんじゃないでしょうか?
恋愛をすると人間はそんなに計算が狂ってしまうものですか?「本能」が顔を出したりするものですか?行動に一貫性がなさすぎて、行き当たりばったりの行動になってしまっています。脳内会議の描写がなければ「変な人」形容されるようなキャラクターです。脳内会議というファンタジーな設定なので、現実世界にはリアルさが欲しかったです。
また真木よう子のパーソナルイメージと真逆だったのも残念でした。背が小さくて驚きました。もっとすらっと高いと思っていましたし、脳内会議のメンバーがパニックになって思考が混乱した時?に現れるボンテージルックの真木ようこ演じるキャラクター(本能?)が階段を降りるシーンがガニ股で不恰好だったのはショックでした。
主人公に全く魅力を感じなかったのが、この映画の最大の弱点です。周囲の男性はどこに惹かれるのかはなはだ疑問でした。いわゆる面倒くさいタイプ。品のない表現だと地雷、今風だとメンヘラでしょうか。
主要な登場人物の内、唯一まともで一番共感できたのは出版社の編集者でいちこに想いを寄せる越智でしたが、それでもいちこのどこに惹かれるのかは良くわかりませんでした。
それぞれの思考の意見と記憶を頼りに合理的に判断するのが理性役の吉田(議長)のはずが、あまり機能しておらず、ポジティブとネガティブの思考や衝動に振り回されていて、この辺りは僕が男だからなのか、いまいち理解に苦しみました。男性の脳内会議ならもっと違ったのでしょうか。
人間はポジティブな感情を失うとネガティヴになるのではなく、バランスが崩れて思考停止に陥るというのは巧く表現されていました。
レビュー
舞台向きの設定と脚本だと思いました。そのうち舞台かされるんじゃないでしょうか。
あるシーンで自身をなくして深い眠りについたポジティブ(神木)が、眠りから覚めて「成長」した結果、主人公が「誰を好きかよりも、誰といる自分を好きかが大切」という価値観にたどり着いたことがこの映画の救いでした。
いちこの「妄想」で脳内会議が行われているということではないのなら、編集者の脳内でも会議が開かれているはずなので、スピンオフで編集者目線で描くか、オチとして、いちこと再開した越智の頭の中でも実は脳内会議が行われている描写があれば、面白かったです。
★★☆(2.5)